遥かへのスピードランナー

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物語の役割/小川洋子

物語の役割 (ちくまプリマー新書)

物語の役割 (ちくまプリマー新書)

人と物語との関係性、そして創作者としての立場からの物語の捉え方が分かりやすく書かれている。小川さんの平易で優しい語り口が、とても読みやすい。

「誰の心の中にも物語はある」と、小川さんは言う。
たとえば、起こってしまった悲劇をなんとか自分の中で受け容れる形に変形させていくこと、嬉しいことをとことん膨らませていくこと、あるいは、困難な現実をなんとか打開するための未来への軌跡を描くこと、こんな人間特有の心の働きを、「物語」と呼ぶ。そんな小川さんの主張は、決して奇抜な人間でない自分にも、結構ドラマティックな物語を作り上げているんだなあということに気付かせてくれる。そして同時に、相手の中にも物語があることも。

物語には、「誰々はどんなことを思った」を書いてくれたりするけれど、現実には書いてくれない。それでも、この人の中にはどんな物語が潜んでいるんだろう?、と考えながら現実に向き合ってみるのは、きっと面白いと思う。