遥かへのスピードランナー

シリコンバレーでAndroidアプリの開発してます。コンピュータービジョン・3D・アルゴリズム界隈にもたまに出現します。

Preview for Glassが公式Glasswareになりました

今年3月から公開していたGoogle Glass用Glassware「Preview for Glass」が、約半年のレビュープロセスを経てようやく公式Glasswareになりました。10/2時点で公式Glasswareは全世界合計で94個しかなく、そのうちの1つということになります。

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公式ページ: http://www.preview-anything.com/

MyGlassのページ: https://glass.google.com/glassware/14547069768774444625

おそらく多くの読者が知らないと思うので説明しておくと、PreviewはGoogle Glassで映画のポスターを画像認識してトレーラーを再生するGlasswareです。ポスター画像の特徴データベースやトレーラーとの紐付などはすべてクラウド上にあり、自動で最新の映画情報が追加されていくのが特徴です。なお現時点ではUSの映画・ポスターにのみ対応しており、また昨年以前の映画はほとんどデータが入っていないのであしからず。

Google Glassの公式Glasswareになるためには、Googleにレビューを受ける必要があります。現時点で、日本語でこのレビューの体験談を書けるのはたぶん自分しかいないと思うので、せっかくなので記しておこうと思います。

1月〜3月プロトタイプ&ベータ公開

今年の1月に画像認識を使ったGoogle Glassアプリを作ろうと思い立ち、とりあえず2日くらいでプロトタイプを作ってデモ動画を公開した。

Glassware "Preview for glass" - recognize the movie image and play its trailer video - YouTube

この動画にGoogle+などで思ったより反響があったので、ちゃんと公開しようと思い、認識ロジックのクラウドへの移行を行って、3月にベータ版を公開した。この時はapkをユーザーに直接ダウンロードしてもらう、いわゆる「野良アプリ」として配布していた。

3/18 音声コマンド申請

当時MyGlassで配布している公式Glasswareは30くらいしかなく、公式になるのはなかなか敷居が高そうだったが、面白そうなのでチャレンジしてみることにした。申請のために第一に必要なのが音声コマンドのレビューだ。

音声コマンドはいわゆる「Ok glass」の後に続くGlasswareを起動するためのコマンドだが、標準で用意されたコマンド以外のものを使うときは、別途申請する必要がある。Previewの場合、当時はぴったり合うコマンドがなく、「Preview the movie」という音声コマンドが使いたかったので申請することにした。

4/3 音声コマンドレビュー結果受領

2週間ほどたって音声コマンドのレビュー結果が来た。「Recognize this」という音声コマンドをそのうち追加するからそっちを使えとのこと。最初みたときは、あまりユーザー目線に立ってないコマンドだなあと思ったのだが、しばらく考えた末に受け入れることにする。

そしてGlassware本体のレビュー申請もするかーと思ったタイミングで、GDKのGlasswareの申請がまだ始まっていないことに気づく。当時はサードパーティからのGlasswareはMirror APIを使ったものしか受け付けていなかったのだ。

4/17〜4/20 Glassware申請

XE16の公開とほぼ同時に、GDK製Glasswareの申請も受け付けつけるようになったので、早速申請する。申請にあたり必要な画像が何パターンかあったのと、プライバシーポリシーのページとかも用意しなければいけなかったので、少し時間がかかりサブミットできたのは結局4/20になった。

〜8/25 休眠期間

サブミットしてから数ヶ月ほとんど音沙汰がなかった。何度かapkをアップデートする必要があって、直接メールのやりとりをしたが、それ以外は「もうすぐ知らせるからね!」と言うばかりで、自分もほぼ諦めかけていた。6月末にGoogle I/OがあったのでGoogle Glass Advocateの人に直接聞いてみたが、「プロセスが遅いのは認識している。issue trackerを立ち上げてスピードアップするからちょっと待ってて!」みたいなことを言われただけだった。

8/25〜10/2 Issue trackerでのやりとり、そして公開

そんなこんなで公式化をほとんど諦めかけていたが、8月末にようやくレビューチームからIssue Trackerを作ったから確認してくれ、というメールが届いた。Issue Trackerといってもただのスプレッドシートである。開くと20個弱のissueが列挙されており、ほとんどが、Glassのブランドと、UIの挙動の統一化に関する内容だった。

Issueはたとえば以下のような感じだ。
・Webサイトのドメイン名にglassを使わない(for-glassとかならOK)
Google GlassではなくGlassという名称を使う
・その際GlassのGは大文字にする
・最初のGlassに™をつける
・Applicationの代わりにGlasswareという名称を使う
・起動時のスプラッシュ画面の代わりに他のアプリも使っている共通のロード画面を使う(サンプルコード&xmlも添付)
・エラー画面で共通のエラーダイアログを使う(サンプルコード&xmlも添付)
・タップしても何も起こらない画面ではタップ時に警告音をならす

最初これらのIssueを見た時は、自分の中のモチベーションも失われかけていて1週間ほど放置してしまったが、レビューチームから「早く対応してね」とやる気溢れるプッシュも受けたので頑張って対応することにした。結局3回くらい修正→確認のやりとりをしてようやく全部OKをもらえて、今日の公開に至るのであった。

所感

ひと通りレビュープロセスを経験して感じたのが、GoogleはGlassのブランドやUIに対してとても慎重だということです。以前Googleが「Glass」という商標を取ろうとしていると話題になってましたが、今回のレビューで「Google Glass」ではなく「Glass」に統一すること・最初の「Glass」に™を付けることなどを指摘されたのを見るともう通ったのでしょうか。(商標データベースの調べ方がいまいちわかっていない)いずれにしても、そこから伺えるのは「Google Glass」という一部のGeekしか興味を持たないデバイスのイメージを改め、「Glass」という既存のメガネという概念に近づけ、それを置き換える方向で頑張っているんじゃないかと思います。Google Glassは死んだとか、Android Wearの影で忘れ去られているとかいろいろ言われていますが、最近はGlasswareもいいペースで増えてきているし、彼らはまだまだ頑張っている印象を受けるので、これからに期待しています。まあ僕も普段は装着してないんですけどね。